少し前になりますが、ソトダン21という外断熱工法を真面目に研究し推進する協会さん主催の特別研修会に参加してまいりました。
私自身はソトダン21さんには加入していないのですが、会員外でも参加可、かつ私の尊敬する建築家、伊礼さんの講演会でしたので楽しみにしておりました。
そして、この研修会でもう一つ楽しみにしていたもの。
それは、断熱と言えばこの人!!の山本亜耕さんと、アトリエO2の大杉さんを加えた3人のガチ討論バトル!!
比較的ズバッと物申す亜耕さんと柔らかな語り口の大杉さんがどう絡むか楽しみでありました。
まずは伊礼さんの講演会から。
当初は、「住宅の標準化」についてお話する予定だったそうです。
しかし、前日の懇親会で急に「沖縄の建築の話」をしたくなったなぁと伊礼さんが切り出せば、皆さん酔った勢いに手伝ってか「いいじゃんいいじゃん」という流れに、、、、、、、
本当に伊礼さん題名変更しちゃいました。
ま、話の中には標準化も入っているのでと、、(笑)
ということで、今回の講演会の題名
「町と家のつながり ~沖縄の住宅から~」
正確に覚えていませんが、確かこのような題名だったはずです。
伊礼さんは沖縄生まれ沖縄育ちの建築家。
やはり、設計的な思考や思想は沖縄に原点があるようです。
今は沖縄の住宅と言えば、まず鉄筋コンクリート造のものを思い浮かびますが、歴史的には開放的な木造建築でした。
沖縄ですから、もちろん強い日射を避けなければなりません。
そのために、大きく庇が伸びた屋根。
強い日射を遮り、同時に断熱するための厚く重い屋根。
さわやかな風を家の中に呼び込むための寝殿造様の開放的なつくり。
台風などの強い風を避けるための防風林。
プライバシーの確保のための石垣やヒンプン。
ヒンプンは魔除けや、ハレとケを分ける環境的な装置でもあると。
北海道と沖縄では緯度が大きく違うので、その求められる機能も性能も違うのは確か。
伊礼さんの建築のすごいところは、沖縄建築のいいところをちゃんと東京の建築においても昇華させていることです。
気候の違いや求められる物の違いもデザイン力でカバーしているのです。
一方、北海道の建築というのはちょっと特殊なんだろうと思っています。
確かに、北海道の建築技術というのは先端を走っていると思います。
断熱気密に対する考え方や施工技術など、本州の建築からは一線を画していると思います。
若いころ、北海道の住宅のコンテストだったか忘れましたがこんなことがありました。
建物前面に大きな開放的な連装窓を配した住宅の発表の時、講評として当時の北海道で活躍する建築家がこう言いました。
「この気候条件でこの開放的な窓は温熱環境的に大きな代償を払うこととなる。北海道の建築はなるべく開口を小さく抑え、外部からは隔離するべきだ」
この講評を聞いたとき、私はちょっと違和感を覚えました。
この住宅を設計した建築家はこう反論しました。
「私はそうは思っていません。この開放的な窓から得られる心の満足感や街との融和性は、少々の環境負荷があったとしても有効なんだろうと思っています」
温熱環境を突き詰めていくと、確かに外部と隔絶された閉鎖された建物としたほうがいいかもしれません。
しかし、それだけに街に対して閉鎖的になってしまいます。
街と家のつながりを絶ってしまうのです。
私はこう教えられて育ちました。
家の内部(インテリア)は自分たちのものなので、好きにしてもよい。
しかし、外部(外観・エクステリア)は皆のもので、皆が好き勝手に造ってしまったら良い環境や街並みは出来上がらない。
なので、外観は街と調和・融和するものでなくてはならない。
その街並みは子供たちの感性を育て、個性を伸ばす。
このような教えを受けているので、今でも設計するときには街との調和を一番に考えます。
今の街並みは、とかく閉鎖的なつくりになっていると思いますし、調和もとれていません。
北米風のデザインの家の隣に和風の家があり、その隣は〇〇ハウスのような一見してどこのハウスメーカーの建物かわかるような住宅があり、、、、、
それは北海道も本州も変わらないと思うのですが、北海道はそれに閉鎖的というキーワードが加わる。
各自それぞれが好き勝手に建てた結果の街並みが現在の日本を形成しているのです。
話しが長くなりそうなので、整理しますと。
私は、伊礼さんの街との調和がとれた開放性の高いロングライフなデザインが好きで影響も多々受けています。
まるで街と会話しているかのようなプロポーションのデザインは大変美しいものがあります。
ま、もちろん宮脇檀さんや吉村順三といった建築家に影響を受けているので、その流れで当たり前なのかもしれませんが。
一方で北海道という地域性から断熱・気密の大切さも痛感しています。
しかし、街から閉ざす、隔離するという事には抵抗感があります。
亜耕さんが、断熱気密を突き詰めていけば日射取得の関係で眺望関係なく南側に大きな窓ということになる。
他の窓はなるべく小さく。
これはちょっと違うんじゃないかと思うのです。
と。
ある程度(と言っても高い性能値)の性能を確保できれば、例えば北側に抜ける眺望があれば北に大きな窓を設けるのもアリなんだと。
なるほど!!
そうですよね。
そうなんですよ。
私は前から北に良い眺望があれば躊躇なく北側リビングにすることがありますが、今回の講演会でそれが間違いではないという事が確信しました。
私の持っている伊礼さんの本です。
相当読み込んでます。(笑)